思春期ニキビは、小学校高学年から中学生、高校生にかけて多くの子どもが経験する悩みです。
「たかがニキビ」と考えがちですが、正式には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という炎症を伴うことのある慢性の皮膚疾患です。「いつか治るから」と放置したり、指で潰すなどの間違ったセルフケアをしたりすると、痕(あと)が残り将来的な肌悩みにつながることもあります。
本記事では、ガイドライン*1に基づいた正しいスキンケアや予防策、皮膚科での治療、そのほかニキビに関するよくある質問を詳しく解説します。
*1尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023, 日皮会誌:133(3),407-450,2023
ニキビとは毛穴に皮脂や垢(古い角質細胞)がつまることで発症し、悪化すると炎症を伴うこともある慢性的な皮膚疾患で、性ホルモン分泌に連動し幅広い年齢層でみられます。その中でも「思春期ニキビ」という場合には、中学生からおおむね18歳くらいまでにできるものを指す場合が多く、「青春のシンボル」といわれるほど多くの人が経験します。
なお「思春期ニキビ」とは医学的な用語ではなく、また「思春期ニキビ」発生の基本的な発症メカニズムは一般的な「ニキビ」と違いがあるわけではありません。
とはいえ、思春期は二次性徴により性ホルモン(アンドロゲン)が急激に増える時期であり、その影響で突然多数のニキビが発生することもあります。そのため「思春期ニキビ」は目立ちやすく、子どもの肌悩みにつながりやすいといえるでしょう。
性ホルモン分泌が安定する頃にはニキビの発生も徐々に落ち着いてくることが多いです。
ニキビは目に見えない「毛穴のつまり」によって毛穴がふさがれることから始まり、この状態をマイクロコメド、微小面皰(びしょうめんぽう)などといいます。毛穴がふさがれた状態で毛穴内部の皮脂腺から皮脂が分泌されると、皮脂が外部に排出されずに毛穴に貯留し「白ニキビ」「黒ニキビ」に進行します。
つまった毛穴の表面が白っぽいものを「白ニキビ(閉鎖面皰)」、毛穴が開いて空気に触れ、酸化して黒っぽくなったものを「黒ニキビ(開放面皰)」といい、これらはまだ炎症が起きていない状態です。
毛穴がふさがれる原因には様々な説があり、性ホルモン、菌や紫外線による炎症、マスクなどによる摩擦やムレ、乾燥など、さまざまな要因が毛穴内部(毛包漏斗部 もうほうろうとぶ)の角化異常を引き起こし、毛穴を狭くするなどといわれています。*2*3角化異常の原因は、まだ解明されていないことも多いようです。
皮脂が貯留した毛穴の中では、皮脂を栄養とし酸素を必要としないアクネ菌などの菌が増殖します。菌が毛穴の中で皮脂を分解して増殖し、皮脂分解産物(遊離脂肪酸)の影響で炎症が起きることで「白ニキビ」や「黒ニキビ」は「赤ニキビ」に発展します。
この状態からさらに膿(うみ)を持つようになると「黄ニキビ(膿疱)」と呼ばれます。
なお、ニキビに関わる菌は常在細菌の「アクネ菌」が有名ですが、近年ではヒトの皮膚常在真菌(カビ)の一種であるマラセチア菌も、ニキビとの関連が示唆されるという研究が報告されています。マラセチア菌はアクネ菌と同様に皮脂を好み遊離脂肪酸を産生するという特性があります。そのため、ニキビ治療の研究において、カビに着目した対策も検討され始めてきています。*4*5
このように、ニキビは「毛穴のつまり→面皰→炎症」という段階を経て進行していきます。炎症がおきた皮膚は表皮に炎症後色素沈着を残すほか、炎症の程度によっては真皮などの皮膚組織に不可逆的な損傷が残ることがあります。これを「瘢痕(はんこん)」といいます。
頬はおでこ(額)などに比べて「真皮が厚く皮下脂肪が多い」という構造上の特徴を持っています。そのため、炎症が肌の奥深く(真皮や皮下組織)まで広がると、いわゆる「クレーター」とよばれるへこんだ形状の瘢痕が残る場合もあります。このような真皮までおよんだ瘢痕はスキンケアでは治すことはできません。
炎症がおきる前の「白ニキビ」「黒ニキビ」の段階で毛穴のつまりを解消することができれば、ニキビ痕はほとんど残らないとされています。
そのためニキビの予防と悪化を防ぐには、早い段階で適切なケアを行うことが何より大切といえます。
*2 化粧品辞典|角栓 (丸善株式会社)
*3 あたらしい皮膚科学 第3版(中山書店)
*4 J Dermatol. 43(8):906-11.1346-8138. (2016)
*5 Clin Cosmet Investig Dermatol.21:15:2003-2012. (2022)
一般的にニキビはおでこ(額)から眉間、鼻(鼻翼)、あごにかけ、皮脂分泌の盛んな部位を中心に発生します。
おでこやフェイスラインは、中高生に流行の髪型がニキビの悪化に影響する可能性はあるかもしれませんが、思春期にできるニキビも上記のような皮脂分泌が盛んな部位にできやすく、一般的なニキビと大きく違いがあるわけではありません。
思春期ニキビは、副腎や性腺からの性ホルモンの急激な分泌増加と皮脂の過剰分泌が主な要因と考えられます。
男女ともに、性ホルモンのうち「アンドロゲン」という男性ホルモンの一種の分泌が増えます。アンドロゲンは二次性徴前の10歳未満では男女ともに非常に低値ですが、二次性徴後はアンドロゲンの影響で皮脂腺が発達し、皮脂分泌が活発になります。そして皮脂が過剰に分泌されると、毛穴に皮脂がつまりやすくなり、ニキビが生じるようになります。
アンドロゲンのほか、テストステロンという男性ホルモンの急増により、皮脂分泌量も増加します。これにより思春期ニキビができやすい状態になります。
女性の場合はエストロゲンなどの女性ホルモン量が増加しますが、同時に男性ホルモンである「アンドロゲン」も卵巣や副腎から分泌されます。男性と比較して早期に副腎から「アンドロゲン」が分泌され、早期にニキビが発生する傾向がありますが、男性ほど「アンドロゲン」の量は多くはありません。*6
*6伊藤,日本香粧品学会誌 Vol.40, No.2 ,93–96(2016)
誤ったスキンケアは時にニキビの悪化因子になることがあります。正しいスキンケア方法を学ぶ事はニキビの悪化を防ぐために大切といえるでしょう。
子どもがニキビの発症をきっかけにスキンケアを始めるのであれば、使いやすいスキンケアアイテムをそろえておき、正しいスキンケア方法も示すようにしましょう。
以下では一般的なニキビ肌のスキンケアについて解説します。
洗顔は、朝晩2回、指や手で肌に直接触れないように、たっぷりの泡でなでるようにやさしく洗うのが基本です。たっぷりのきめ細かい泡はそれ自体がクッションになり、肌への負担をおさえます。
ニキビ肌の場合、洗顔時に指で触れたニキビを爪で押しつぶさないように、手のひらと指の腹でなでるように洗うのがポイントです。
なお、こまめに皮脂を落とそうと、1日に何度も顔を洗うのはNGです。洗顔回数を増やしてもニキビの改善にはつながらないことがわかっています。それどころか、肌の乾燥トラブルの原因となる場合もありますので気をつけましょう。
手だけできめ細かい泡をたてるのは案外難しいものですので、子どもの洗顔にはプッシュするだけで泡を得られる洗顔料がおすすめです。
チューブ式などの泡立てる必要のある洗顔料を使用する場合には、泡立てネットなども活用しましょう。泡立てネットは使用後によく乾かし、清潔な状態で保管するようにしましょう。
熱いお湯は肌を守るのに必要な保湿成分まで必要以上に洗い流してしまうため、人肌よりもやや温度が低めくらいの「ぬるま湯」で洗うようにします。
洗顔料が肌に残ると肌への刺激になることもあります。髪の生え際やフェイスラインなどにすすぎ残しがないよう、ていねいに洗い流しましょう。
洗顔後にはタオルで肌をこすらないように、やさしく押しあてて水分をふき取ります。
カビと細菌に着目して開発された、プッシュ式の泡で出てくる薬用洗顔料です。
ニキビの原因となる過剰な皮脂を洗い流し、菌の増殖を防いで、ニキビを防ぎます。
通常通り洗顔しすすいだあとにも、抗カビ(真菌)成分ミコナゾール硝酸塩が皮膚表面にカビの増殖を防ぐ程度残存するように作られています。
(本製品は医薬部外品です。ニキビの治療ができるわけではありません。)

皮脂分泌が多い思春期の方は油分を含まないノンオイルのスキンケアがよいと考えがちですが、肌をしっとりと整えるには、化粧水だけでなく乳液やクリームも使うようにしましょう。油分で肌にふたをすることで水分の蒸散を防ぎます。
それまでスキンケアを行う習慣のなかった子どもがニキビをきっかけにスキンケアを始める場合、保湿アイテムが複数あると負担に感じることもあります。洗顔後になにか1品だけを選んでつけるのであれば、水分と油分をバランスよく含む「乳液」がおすすめです。
また、保湿アイテムを選ぶ際には「ノンコメドジェニックテスト済み」と書かれているかどうかを確認しましょう。すべての方にニキビができないわけではありませんが、実際にヒトの皮膚に塗布し、ニキビの原因になりにくいことを確認した製品であることを示しています。
トラネキサム酸配合の肌あれを防ぐ乳液で、水分と油分をバランスよく含みます。べたつきにくい使用感で、さらっと塗りひろげやすく、初めてスキンケアを行う子どもにも使いやすい製品です。ノンコメドジェニックテスト済み(すべての方にニキビができないわけではありません)。
(本製品は医薬部外品です。ニキビの治療ができるわけではありません。)

紫外線はニキビの炎症を悪化させ、炎症がおきたニキビは治った後も色素沈着を残す場合が多いです。そのため、ニキビケアの一環として紫外線対策は重要といえます。
日焼け止めは外出前に使用しますが、一度ぬったらそのままにするのではなく、汗をかいてふき取った後などにはぬり直すことも大切です。
ニキビができやすい方は、ノンコメドジェニックテスト済みの日焼け止めを選んで使うようにしましょう。
こちらのUVクリームも、ニキビの原因になりにくいことを実際に人の皮膚に塗布して確認したノンコメドジェニックテスト済みの製品です。(すべての方にニキビができないわけではありません)
SPF35 PA+++の製品で、日常生活から軽いレジャー程度の紫外線を防ぐ日焼け止めです。
(本製品は医薬部外品です。ニキビの治療ができるわけではありません。)

以下のコンテンツでは洗顔、保湿など、具体的なスキンケアのポイントを動画でわかりやすく紹介しています。あわせて確認してみましょう。
【医師監修】ニキビ痕(あと)を残さないためのスキンケア
以下では、日常生活における注意点を紹介します。
ニキビを自分で潰すと、細菌の感染などにより炎症がおき、ニキビ痕が残る原因になります。
子どもには「自分でニキビを潰すと痕になる可能性が高まるため、自分では極力触らない方がよい」と説明しましょう。
前髪がおでこに当たる刺激や、汗によって肌が常に湿った状態(湿潤環境)になることは、毛穴の出口をふさいでつまりを助長する要因になる説があるほか、マスクのこすれやムレがニキビの悪化を示唆する報告もあります。*7
思春期ニキビが気になる場合は、前髪ができるだけおでこにかからないようにする、汗をかいたらこまめにふき取るなど、刺激やムレを避けるようにしましょう。
*7 JAAD. Vol.84(2) 520-1 (2021)
ニキビの悪化を招く要因として、スマートフォンの通話も考えられます。
スマートフォンで通話し接触する側の頬は反対側にくらべニキビの数が多いといった報告もあります。*8
物理的な摩擦や画面に付着した汚れや雑菌が肌に触れることを避けるため、ハンズフリーでの通話や、画面をふき取り清潔に保つことも考えてみましょう。その際、エタノールなどで不用意にふき取るとスマートフォンの故障につながることも考えられます。必要に応じスマートフォンの説明書を確認しましょう。
*8 Clin Exp Dermatol. 2020 Oct 1;45(7):903–905
ニキビが悪化する要因としては、偏った食事や睡眠不足、ストレスなどが考えられます。
特に10代の睡眠不足をはじめとした生活習慣の乱れは、ホルモンバランスに影響し、成長期の子どもの心身に悪影響を与えます。規則正しい生活を心がけることは大切なポイントです。
思春期の子どもの生活習慣に介入するのは時に難しいことではありますが、子ども本人がニキビを気にしているのであれば、生活習慣とニキビの関係について大人と話し合うことも必要といえるでしょう。
洗顔や保湿などの適切なスキンケアを行っていても、思春期ニキビは性ホルモンの関与が特に大きいため、できる時はできてしまいます。思春期ニキビができてしまったら、炎症がおきる前の白ニキビや黒ニキビのうちに皮膚科を早めに受診しましょう。
毛穴のつまりを取り除くことでニキビを治すことができますが、スキンケアだけで毛穴のつまりを解消することは難しいといえます。
処方薬には、毛穴のつまりを取り除くことでニキビを治療する塗り薬があります。皮膚科専門医を受診して早めに適切な治療を行うことはニキビ痕を残さないために大切です。
〈関連記事〉ニキビ痕(あと)を残さないためのスキンケア
ニキビを1日で完治させるのは、難しいといえます。
ニキビは毛穴のつまり(面皰)をきっかけに、炎症(赤み・腫れ・膿など)へ進むことがあるため、落ち着くまでには一定の時間がかかります。
とくに赤く腫れて痛む・膿がある場合は、短期間での改善が難しいため、早めに医師へ相談し、適切な治療を始めることが大切といえます。
また炎症をおこす前のニキビであれば、早めの治療で痕も残らず数日で治ることもあります。ニキビを早く治すなら、早めに皮膚科専門医にみてもらうようにしましょう。
個人差がありますが、思春期ニキビはホルモンバランスが安定してくると自然に落ち着いていくことが多いとされています。
ただし、人によっては20歳を過ぎてもニキビが落ち着かないという方もいますので、個人差があります。
思春期ニキビと大人ニキビに皮膚科学的な違いはありません。
しかし、思春期にはそれまでニキビがなかった子どもにニキビが多数発生することがあり、見た目の変化は大人のニキビよりも大きいかもしれません。さらに、思春期は精神的にも繊細な時期ということもあり、ニキビに対し深い悩みをかかえることも考えられます。
ニキビは90%以上の人が経験する疾患で、思春期にまったくニキビができない人はごく少数といえます。
ニキビのできやすさは、性ホルモンの分泌量や皮脂腺の状態、毛包漏斗部のつまりやすさなど個人差があり、生活習慣や遺伝的要因が大きく関係しています。
思春期ニキビが治らない場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
また、こするようにゴシゴシ洗う、ニキビを潰すなど、よかれと思って実施していた自己流スキンケアがニキビの悪化因子になることもあるため、正しいスキンケアを学んで実践することも大切です。
男性の方やメイクをしていない方は、必ずしもクレンジングを使用する必要はありません。1日2回の泡洗顔で過剰な皮脂を落とし、肌を清潔にすることが基本となります。
ウォータープルーフの日焼け止めなどを使用する際、日焼け止めのパッケージにクレンジングに関する記載があれば、製品の記載を参考にするようにしましょう。
ニキビは早めの治療と適切なスキンケアにより、ニキビ痕を残さずきれいに治すことが可能です。
ニキビができてしまった時には早めに皮膚科を受診するようにしましょう。
また、日々のスキンケアがニキビの悪化因子にならないように、子ども自身が正しい洗顔・保湿のケアのポイントを学び、実践するようにしましょう。
本記事が思春期の子どものニキビ対策の助けとなれば幸いです。